文鎮型組織

文鎮型組織の特徴

 

文鎮型組織(読み)ぶんちんがたそしき

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

権限を基調としたタテの関係の弊害をなくすために,階層の数を減らしていくと,ごく少数の管理者以外は全員ヨコの関係という組織ができ上がる。これを組織図にすると,文鎮のような形になることからこう呼ばれる。現在,研究・開発部門などに採り入れられている。

 

辞書的な意味と実際に使われている意味には差があります。
上述のように辞書的にはピラミッド型からフラット型組織を目指し階層を減らした組織だと言われています。
が、実態として社員数30~100名規模の中小企業でピラミッド型にすらなっていない事を文鎮型組織と呼んでいます。
また、私もピラミッド型へ組織化されていない組織の事を文鎮型組織と呼んでいます。
当ブログでは、社長がつまみ部分で社長以外は全員がヨコの関係である組織の事を文鎮型組織と呼ぶことにします。
文鎮型組織の特徴は、文鎮のつまみ部分であるトップに全てが集約される事です。
トップ以外は役職名がついていても権限も責任もありません。
この図では常務も一般社員も同列にしていますが、このような会社も珍しくはありません。
各現場で起きている全ての出来事をトップが把握し決定します。
経営方針などの大きな事から、机の配置や席順にいたるまで全てトップが決定、関与します。

 

文鎮型組織になる原因

 

文鎮型組織になる原因は2つあります。
社長に原因がある場合と仕組に原因がある場合です。
社長に原因があるのはある時期までは仕方がない事かもしれません。
創業社長の場合などは、社長が誰よりも早く出社して誰よりも遅くまで仕事をしているのが当然の会社もあります。
社員を採用しても教育するより自分がやった方が早いので社長が全てを行ってしまう。
社員は育たないで社長に言われた事だけをやる。
その結果、組織規模は大きくなっても全ては社長決裁の文鎮型組織となってしまいます。
仕組に原因がある場合とは、ある程度の組織規模になると各部門の責任者を配置するようになります。
各部門の責任者が管理職となって自部門についての決済を任されるようになります。
しかし、管理職の権限と役割が曖昧なままです。
この時点で仕組を導入する事で文鎮型組織からピラミッド型組織への転換が可能となります。
しかし、仕組がないため名ばかりの管理職が大勢いるものの全ては社長が決定する文鎮型組織のままとなります。

文鎮型組織のメリットとは?

最大のメリットはスピードです。
何といっても即断即決が文鎮型組織の一番のメリットです。
トップが一人で決めるので意思決定が速い。
決めた事をすぐやるので実行が速い。
結果が出るのが速い。
中小企業の会社のトップは四六時中仕事の事、会社の事を考えています。
外部環境(競合、市場、顧客)の変化を誰よりも速く察知します。
内部環境(人材、設備、金)の現状を誰よりも分かっています。
外部環境が自社に有利だと判断したら一気呵成に進めます。
今がチャンスと決めたら必要な資源を補いつつ攻め込めます。
お金を借りてくるのも人を採用するのも設備投資を増強するのも社長の独断で出来ます。
競合他社が議論を重ねるための合意形成をしている間に勝負は決します。
他には、緊急事態である事業再生時にも強みを発揮します。

私は事業再生コンサルタントとして金融機関の要請を受け窮境に陥っている企業の再生を支援してきました。
90日程度で事業の方向転換を行いますが、
このような緊急事態にもトップに全ての権限を集約した文鎮型組織の即断即決が威力を発揮します。

文鎮型組織のデメリットとは?

文鎮型組織のデメリットは3つの症状として現れます。
1つ目は、上記のメリットであげた即断即決は毎回決めた事が変わる朝令暮改のデメリットになります。
一貫性が無いため社員は振り回されます。
全ては社長の頭の中の直観が根拠になりがちです。
その結果、考えない「イエスマン」の部下を量産する事になります。
出来の良い部下は自分で考えて進めたくても毎回社長にお伺いを立てるのが嫌になって辞めていきます。
また、社長が不在だと事業が回らないため、
社長は日常業務に忙殺されて将来の事を考える事が出来なくなります。

バタ貧(バタバタと忙しく働いていでも貧乏の略)社長の出来上がりとなります。
分かりやすい例ではアメリカのトランプ大統領です。
中国は敵国だと決めて制裁行動に出る。
メキシコとの国境に塀を作る。
などは、階層型組織では実行したくても調整に時間がかかります。
大統領の意見に従わない人は辞めるか辞めさせられます。

2つ目は社員が定着せず組織化出来ない事です。
トップの価値観や好み、趣味嗜好まで押し付けられるので合う人と合わない人にはっきり分かれるからです。

3つ目は、人材育成が出来ない事です。
カリスマ型トップは自分の仕事の仕方を押し付けます。組織として人材を育てる事は出来ずに合う人だけが残る組織風土になるため「出来ない人が悪い。」となりがちです。

文鎮型組織の事例

 

私の友人のベンチャー企業の事例を紹介します。
10年で売上100億円、社員数50名規模にした後、破綻しました。
彼は学生時代にアメリカの大学に留学して、アメリカの日系企業に就職しました。
その後国内のコンサルティング会社などを経て独立しました。
それまでは対面販売しかなかったある業界でインターネットを採り入れたマッチングシステムを構築しました。
次々と打ち出す新事業は斬新でした。
本名以外にビジネスネームを持つカリスマ経営者でした。
一時はテレビや雑誌などにも登場し時代の寵児ともてはやされていました。
マスコミや周囲にちやほやされる一方で社内には誰もトップの頭の中を理解できる人材は育ちませんでした。
そのため、彼はいつもイライラしていました。
出来の悪い部下を罵倒しました。
「出来の悪い人材しかいない。」
「誰もオレの言う事を分からない。」
「はい。と言いつつ動かない。」
と、部下に対するパワハラとなりました。
その結果、社員は辞めて会社は文鎮型組織ですらなくなりました。
その後、資金繰りに行き詰まりトップは雲隠れしてしまいました。
彼がどうなったかは風の便りも聞かなくなりました。

まとめ

以上、文鎮型組織の特徴とメリット、デメリットについて考察しました。
私は文鎮型組織をピラミッド型組織へ変革するコンサルタントです。
立場的には文鎮型組織を評価したくありません。
しかし、起業経験もあるので、起業間もない頃の文鎮型組織の良さも実感しています。
事業が軌道に乗るまでは文鎮型組織を社長の強烈なリーダーシップで引っ張る。
事業が定型化されたら速やかに文鎮型を卒業して欲しいと願っています。
また、事業再生コンサルタントを経験した立場としては非常時には階層型ではなく文鎮型組織で一気にV字回復した例を知っています。
自社の事業の成長過程と組織の成長過程を勘案して、文鎮型組織⇒ピラミッド型組織⇒フラット型組織へと成長して欲しいものです。

参考:ピラミッド(階層)型組織