自分ごと組織づくり5つのポイント 【ケース7】

当ブログは社員数30人から社員数100人程度の中規模、中企業を対象としています。
人と組織の潜在力を顕在化する組織作りのプロである内海透が執筆しています。
組織作り、組織改革、組織再構築で他人ごと組織を自分ごと組織にするポイントを記しています。

【ケース7】定着しない今どき社員
当社のお客様は3K職場が非常に多いのが特徴です。当社がこれまで関わった業種の中で牧場、畜産加工業、製造業、金属加工業、建設業、建設機材リース業、家事代行業、ハウスクリーニング業、福祉業などは3k職場と言われています。現場で働く人の定着率を高めたいのはどの企業も同じです。今回は私が見ていて最も過酷だと思われる牧場の定着率向上の事例について紹介します。
皆さんのご想像通り「相手が生き物」です。生き物は休みません。しかも牛が成長するまでには3年ほどかかります。日本の畜産業のほとんどが家族経営です。子牛を買ってきて育てて出荷する形式が一般的です。種付け、出産、哺乳などは24時間体制ですので家族経営の牧場は敬遠します。
一貫生産の牧場では全ての業務を分担して行います。
種付け(人工授精)や出産対応の部署、生後間もない赤ちゃん牛への哺乳部門。子牛から成牛にするための育成部門、より大きく育てる肥育部門に分かれます。牧場長は病気の牛がいないか目を光らせます。牧場の仕事に憧れて就職希望する人は一定数います。が、なかなか定着しません。経験が無い人が出来る仕事は肉体労働などに限られるからです。
いざ働いてみると牛との触れ合いなどへの憧れ以前に大きな牛をもっと大きくする重労働と向き合わなくてはいけません。数十キロもある藁を集めて牛に食べさせることが仕事です。軽トラックの荷台に餌を積んでは降ろす事を1日に何度も繰り返す単純作業です。新人が来ては数か月で辞めていく。早い人では3日と持たないのも無理からぬことです。
私が同行調査した日は7月にしては涼しい1日でした。しかし、作業服を着て半日一緒に歩いただけで汗まみれで着替えが必要なほどでした。(全く肉体労働せずに同行するだけでです。)担当者は黙々と段取り良く仕事を進めます。「一人前になるのにどれくらいかかるか?」と聞いたところ「3年くらいかかりますよ。餌を食べさせるだけではなく牛の様子を見ながら異変に気が付かないとダメですからね。」との事でした。「マニュアルはあるのか?」と尋ねたところ「ありませんよ。見て覚えるしかないです。」との答えでした。
同行調査の結果を経営陣に報告し牧場の仕事のマニュアルと教育プログラムを作成する事となりました。
短期間で辞めてしまう人は誰に相談したら良いかも分からないまま辞めてしまっているのではないか?との仮説を立てました。最初の1週間は牧場全体の仕事の流れや牛が産まれてから市場へ行くまでの流れを概観させるようにしました。次の1週間からはそれぞれの部署で先輩と一緒に働くようにして1か月間で全部署を経験出来るようにしました。
2か月目からようやく肥育部門で先輩について牛に餌を食べさせる仕事をさせるようにしました。肥育部門の仕事は変わらず肉体労働ですが牧場全体の仕事を知り自分の役割を理解し自分の将来像が見えてきたことが離職率低減の大きな理由でしょう。

 

【自分ごとにするポイント】
学習ステップを踏まえた教育プログラムを作成する事がポイントです。物事を全く知らない段階から出来るようになるには学習ステップと呼ばれる段階を昇ります。人材育成の際にこのステップを知らないと「何で出来ないんだ!」と怒鳴り散らす事になります。

1.出来ない事を知らない=無知→2.知る →3.意識して出来る →4.無意識に出来るの4段階です。
上記の4ステップに則った教育を実施します。
・手順
1. 知識情報を提供し概要を理解させます。会社が作っている製品やサービスの工程や現場を見学させます。
2.実際にやらせてみて、知っているが出来ていない事を実感させます
3.出来るまで量稽古を積ませます。
4.無意識にできるレベルに体に覚えこませます
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ褒めてやらねば、人は動かじ。」は山本五十六の言葉です。出来ないから出来るへのステップアップで重要なことは上司の率先垂範と量稽古です。自動車の運転免許を取得した時のことを思い出してください。初めて教習所に行ったときにどのような気持ちだったでしょうか?「みんな運転しているんだから自分でも運転できるだろう。」と思いつつも不安だった事でしょう。学科で知識や情報を教えられ、横に教官が乗った状態で教習所内のコースを何度も運転しました。知らない=無知の状態から知識を得て安全な場所で何度も運転することでようやく「意識すれば出来る」状態になりました。更に何度も運転することで無意識に運転できるようになりました。無事に免許を取得し、プライベートで運転したり仕事で運転する事を繰り返し無意識で運転できるようになりました。音楽を聴いたり、会話をしたりしながら長距離ドライブにも行けるようになりました。
学習ステップに則ったプログラムを作成する事で定着率が低い会社でも定着率を高める事が可能となります。

 

 

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